私がゆりりんと出会ったのはほんと数か月前のこと。私が休日にデパートで買い物をしていたある日。
(んー。今日は何か面白いものはあるかなぁ……)
私は一人でよくこのデパートに買い物に来る。今日はこれといって何かを買いに来た訳ではない。つまり、暇つぶしだ。
このデパートは凄く広くて、1階の中央スペースは広々としていて、時々コンサートなども開催するほど大きなステージもあるデパートだ。
私は暇なとき、毎週のように陳列が変わるこのデパートを見に遊びに来るのだ。
(あ、このオモチャ可愛い……)
私はふと目に入った小さなマスコットのキーホルダーを眺める。私はこういった可愛いものや小物が好きで携帯などに付ける訳でもなく買ってしまったりするのだ。
(んー……でも先週も同じようなの買ったばっかだし……)
私はそんな感じで今日もウィンドウショッピングを続けているとその出来事は起こった。
「きゃああああああああ!」
突然、1階のホールから女性の叫び声が聞こえた。私はびっくりして慌ててホールが覗ける場所に移動をする。
(魔法少女……?)
そこには黒と紫色のヒラヒラした衣装を纏った自分と同じくらいの年代の女の子が宙に浮いていた。まさにアニメや漫画でいう魔法少女というやつだ。
しかし、その魔法少女の隣には自分の下半身を抑え苦しむ男性の姿がそこにはあり、その男性の下半身を押さえ倒れている。
「えっ……!?」
私は暴行事件を目撃してしまったかのような衝撃が走る。思わず体が固まってしまい、逃げようと思ってもその現場から目が離せない。
「わぁあああああ!」
また別の悲鳴がデパートに響く。私はようやくその叫び声によってはっと我に帰り身動きが取れるようになった。
(とにかく急いでここから逃げなくちゃ……!)
私は急いでホールとは別方向の出口へと走った。しかし、出口方面に進むにつれてどんどん人混みが多くなり、終いにはピタリと進行が止まってしまった。
「なんで出口が閉まってるんだ!」
「早くここから出して!」
「俺の大事なものを潰されてたまるか!」
出られないことにより、様々な叫び声が飛び交う。もう完全にデパートの中は大パニックだ。
「ふふ。ここのデパートにいる人間は一人残らず逃がさないわよ」
すると、出口付近に先ほどの黒い魔法少女が瞬間移動して来て、そう言うと、近くの男性の股間に向かって魔法を放った。
「うわああああああああああ!」
魔法を打たれた男性は下半身を押さえ悶え苦しむ。それを見た周りの人たちは一斉に逆方向へと逃げ出す。
「いやあああああああ!」
更に列は大混乱し、我先にとそれぞれの人々が逃げ惑う。私はその流れに流され、変な方向へと歩かざるを得なくなってしまう。
「あはは。それそれ♪」
黒い魔法少女は手当り次第、次々と男女問わず魔法をぶつけている。私も早く逃げなくては自分がどうなってしまうか分からない。
逃げ足の遅い私はこのままではと思い、咄嗟に近くの寝具店に入った。
(奥のベッドに隠れれば……)
私は店の奥へと進む。そして、一番奥にあった豪華なレースの掛かったまるでお嬢様が寝るようなベッドを見つけ、そこに潜ろうと考える。
(く、靴を履いたままだと駄目だよね……)
私は緊急事態とはいえ、こんな豪華なベッドに入るのに靴のまま潜り込むことに躊躇してしまい、わざわざ靴を脱ぎ、靴をベッド下に隠すとようやくベッドに潜りこんだ。
遠くの方で叫び声が聞こえる。私は見つかりませんようにと必死に願いながらも手を握る。
すると私の考えが良かったのか、どんどん叫び声や地響きが遠さがっていく。私は一命を取り留めた気持ちになりほっと安堵してしまう。
(ここからどうしよう……)
私がそんなことをベッドの中で震えながら思っていたその時。
「ねぇ、あなた」
私のすぐそばで声が聞こえた。私は思わず見つかってしまったのかと思い、心臓が跳ね上がった。
(嘘……見つかっちゃった……?)
私の心臓の鼓動がどんどん早くなる。私はどうしようと焦る。
「ねぇそこのあなた。私は味方よ。だから顔を出して頂戴」
小声で話すその声の主は先ほどの黒い魔法少女とは違っていることに私はやっと気が付いた。
「え……誰……?」
私はベッドの中から少しだけ顔を覗かせ辺りを見渡す。しかし、辺りを見回しても人影はなく、私はこの緊張感のせいで幻聴が聞こえ始めたのかと不安になり始める。
「こっち! こっちよ!」
再度呼びかけが聞こえる方を見る。そこには猫の足があり、私はもう少しベッドから顔を覗かせた。
「やっと出てきてくれたわね」
顔をベッドから出すとそこには喋る猫がそこにいた。
「え……? 猫……?」
私は喋る猫が目の前にいることに目を丸くしてしまう。
「えっと……私を呼んでたのって……」
「そう、私よ。あ、まずは名前を名乗らないとね。私のなまえはゆりりん。ここから離れた星の百合星からやってきた妖精よ。あなたの名前は?」
ゆりりんと名乗る猫は勝手に自己紹介を始める。
「え、えーっと……み、三日月ゆりな……です」
名前を聞かれ、反射的に名前を言ったものの、私は情報の多さに困惑してしまう。頭の上にははてなマークがいっぱい浮かび上がってしまうほどだ。
「ゆりなね。で! 今理解してなくてもいいから私の話を聞いて」
私の目の前にいる喋る猫は慌てた様子で話を進める。
「今、この外で暴れ回っている黒い魔法使いがいるのは分かっているわよね? それを退治もしくは撃退してほしいの」
「えぇ!? そ、そんなの無理だよぅ!」
私は思わず条件反射で答えてしまう。
「そのまま戦ってという訳じゃないわ。私と契約してほしいの。まずは私の額にキスをして」
ゆりりんはそう言うと私のすぐ傍に近付き、額を私へと向ける。私は言われるがまま、とりあえず額に唇を付けるとゆりりんの全身が眩しい光に包まれた。
私は思わず目を瞑ってしまい、収まった頃に目をあけると、そこには銀髪で私より背が高く、スタイルの良いモデルのような女性が清楚な恰好をして私の隣に横になっていた。
「ふぅ。これで一つ目の準備が整ったわね」
自分の目の前に美人な女性が現れたと思うと私は急にドキドキとしてしまう。ましてやそんなお姉さんが私の隣で横になっていると思うと余計に緊張してしまう。
「え、えっと……私はどうすればいいの……?」
高鳴る鼓動を押さえつつ、私は目の前のお姉さんに聞く。
「契約は性的興奮が最大になった時に魔力が吸収しやすいから貴女はただ目を瞑っていればいいだけだから大丈夫よ。それじゃ、いくわよ?」
急に変な事を真顔で言い出すお姉さんに私は自分で言った訳でもないのに赤面してしまう。私は慌てて、契約に取りかかろうとするお姉さんの手を掴み止めた。
「ちょっ……ちょっと待って下さい! せ、性的興奮って具体的にどんなことを……」
私の胸は更にドキドキとしてしまい、もう抑えることが出来ない。
「何って……キスをしながら魔力を送り込みつつ、人間の女の子が性的に感じやすいとされる胸や下半身を空いている手で興奮をより催促するだけよ?」
目の前のお姉さんは淡々と説明する。
「え、えっと……そ、そんな恥ずかしいこと急に言われても心の準備が……」
「初体験が気になるなら平気よ。女の子同士ならノーカウント、と誰かが言っていたわ」
「そ、そういう事じゃなくって!」
私は赤を真っ赤にしながら突然の状況に目を回す。
「うぅ……」
ゆりりんは私が恥ずかしがっている理由が分っていないのか、首を傾げている。出会ってまだ数分しか経っていないにも関わらず、しかも美人なお姉さんと急にそんな性的な行為をするなんて私には恥ずかしすぎる。でも、ここで私が逃げたりしたら外にいる悪い魔法使いはどんどん酷いことを続けてしまう。
(これはしなくてはいけないことなんだ……そういう変なことじゃないんだ……)
私は心でそう言い聞かせて決心させた。
「わ、わかった……そ、それじゃあ初めても……大丈夫です」
私は恥ずかしながらもそう言い、目を瞑る。いくら決心したとはいえ、これから初めての行為に私の心臓は張り裂けそうなほど高鳴っている。
「んっ……」
ゆりりんの柔らかな唇が私の唇に触れる。初めて他人と唇を重ね、少し不思議な気分になってくる。
「ん……ゆりな、口を少しあけて」
私はゆりりんに言われるがまま唇をあけると、そこにゆりりんの舌がぬるりと私の口に入り込んだ。
「んむっ……」
初めての感覚に思わず声が漏れてしまう。そんな恥ずかしい声を出してしまう自分に体がどんどん熱くなっていく。
そして、ゆりりんの口から唾液が流れ込む。自分の唾液は味なんて気にしたことなかったけれど、ゆりりんの唾液は温かくて、少し甘い味がした。
「んっ……んむっ……」
キスをしているだけなのにこんなにも私の体は火照り、体が疼く。こんな感覚は初めてだ。ゆりりんは次に私の上着の下から手を伸ばし、私の肌に触れる。
「んぁっ……」
少しだけ冷たい手が肌に触れ、声が漏れる。しかし、すぐその手は私の肌に馴染み暖かくなった。優しい手は私の腰を撫で、ゆるやかに私の胸元に動いた。
「んっ……」
ゆりりんの手はまだ発育途上な私の胸を優しく撫でる。じわりじわりと胸の先端に近付き、そして乳首に触れた。
「んんっ……」
体が敏感になってしまっているのか、私は小さく声を漏らしてしまう。少し触れた程度なのにも関わらず、私の胸の先端は熱を帯び尖らせてしまった。
「んっ……。契約の結界で声が響かなくなっているから声を出しても平気よ……」
ゆりりんは私の耳元でそう囁くと、今度は乳首を弄びながら耳筋を舐めた。
「ひゃんっ……んんっ……」
舌が耳筋に触れた途端、ざわざわと鳥肌の立つような刺激が全身に走る。次第に私の下半身からは蜜が滴り、じわりと下着を濡らしてしまう。
ぴちゃぴちゃと耳元で音を立て、首筋に舌が這い回る。耳元の感じやすいところを舐められる度に私は声を上げてしまう。
「んんっ……あぁっ……んっー……」
胸と首筋を刺激され、みるみるうちに下着は甘い蜜で溢れてしまいそうになる。
「んっ……そろそろ大丈夫かしら」
ゆりりんはそう言うと胸を触っていた手をゆっくりと下に下ろした。スカートを捲り、ショーツに手を潜りこませる。
「んんっ……」
ゆりりんの手が私の恥ずかしい部分に触れる。一瞬にして蜜が絡み、ゆりりんの手を汚す。
「あら……こんなに濡れて……感じやすいのかしら? これなら契約が簡単に済みそう」
ゆりりんはそう言うと私の秘部の中へと指を入れた。
「あぁっ……んんーっ……」
初めて他人の手が私の一番感じやい場所へと触れる。自分でするのとでは大違いな刺激的な感覚が全身を振るわせた。
「んんっ……あっ……あぁっ……」
ぴちゃぴちゃと私の小さな蕾は水音を立てる。ゆりりんの指が動く度にびりびりと体に電流が走る。
「それじゃ指を動かしながら頃合を見て魔力を注ぎ込むわね」
ゆりりんは作業をするかのように次々と段階を進めていく。そして、次の瞬間。
「あぁっー! んんーーっ!」
ぐちゃぐちゃと指を激しく動かし、感じやすい場所をどんどん刺激していく。私はされるがまま声を荒げてしまう。
「はぁはぁ……ゆりなちゃん凄い……」
ゆりりんも次第に息遣いが荒くなり、空いた手で私の胸を弄ったり首や肋骨などにキスをする。
「んんっ……あぁっ……」
これが契約の効果なのか分らないけれど、私は今まで1番の快楽を感じてしまっている。どうしようもないほど私の体は快感を求め、体をくねらせ、更なる刺激を求める。
「んぁっ! んんっーーーっ」
ゆりりんは分っているかのように私の感じやすい場所を次々と刺激し、早くも私の体は絶頂に近付いてしまう。
「ゆりりん……わ、私……も。もぉ……んんっ……」
私はゆりりんにそう告げると、ゆりりんはその唇を塞いだ。再びゆりりんの舌が私の口の中へと入っていく。そして今度は先ほどの唾液とは別の甘い液体が私に注がれる。
「んんっーーーーーー!!」
私はついには体をびくびくと震わせ、絶頂へと導かれる。そして蕾からは蜜が大量に溢れ、下着を盛大に濡らしてまう。それと同時に私の体には光が包みこみ、まるで母親に抱かれているかのような暖かくふわふわした感覚になっていく。
強い光が収まると私の体には優しい光がまだ身を包んでいた。そして驚くことに私は黒い魔法少女とは別の白い魔法少女の服装になっていたのだった。
「わ……わわ……ほ、本当に魔法少女だ……」
言われるがまま、されるがまま魔法少女になってしまった私。
喋る猫かと思えば大人の女性に変身、更にはえっちな契約をして私が魔法少女に。こんな短時間でこんなに次々と超展開が起きてしまうとさすがの私の感覚が麻痺したのか何だか何とかなりそうな気もしてきてしまう。
「えっと……で、この後はどうすればいいの?」
変身したはいいものの何をどうすれば良いのか分らず棒立ちしてしまう私。
「ふぅ。えっとまずはあなたの持っているステッキ! そこに強い気持ちを込めれば魔法の弾を放つことが出来るわ!」
「ふんふん」
私は普段では考えられないような勉強姿勢でゆりりんの話を聞く。
「で、これは練習を重ねないと難しいかもしれないけれど足に力を込めるイメージをすれば飛ぶことだって出来るわ」
次々と魔法少女について話す。私は何となくでしか理解出来ていないものの、何となく出来るような気もしてきた。
「で、次に……」
説明を淡々とするゆりりんが急に言葉を詰まらせた。
「……?」
驚いているゆりりんに対して後ろに何かあると思い、振り返るとそこには例の悪い魔法少女が立っていた。
「こんにちは。お嬢さん」
私も思わず青ざめてしまうほど驚いてしまう。
「あ……えっと……」
私が緊張のあまり固まってしまっているとゆりりんが叫んだ。
「ゆりな! 走って!」
ゆりりんの大声ではっとなった私は悪い魔法少女の横を走り抜ける。
「な……待ちなさい!」
変身したおかげか、思った以上に早く走ることが出来て悪い魔法少女から遠ざかることに成功した。
そして、私は見つかり難い柱のそばに身を隠す。
(とにかくあの悪い魔法少女に一発でも攻撃を当てて撃退しなくちゃ……)
私は隠れながらも必死に攻撃することのイメージをする。ステッキに意識を集中させ力を溜める。すると少しずつステッキが光りだした。
(なんとなく魔法が理解出来た気がする……これなら……)
私はさっきとはまた別の緊張で鼓動が早くなる。今の状態で攻撃するチャンスはきっと一回。外してしまったらきっとまた逃げるのは困難。だから出来るだけ一発の攻撃を最大にして当てなくてはいけない。
「ふぅ……よし……やってみる」
「頼むわよ……ゆりな……」
ゆりりんが小さく応援してくれる。その優しさが私に少しだけれど勇気を与えてくれた。
私は柱から顔を覗き込み様子を見る。すると、ホールの真ん中で私を探してキョロキョロとしている例の黒い魔法少女を見つけた。
「ふぅー……。いくよ……ゆりりん」
私はもう一度、深呼吸をしたあと悪い魔法少女に向かって突撃をした。
「やぁあああああああ!!!!」
全力全開でステッキに力を注ぎ込む。そして、目の前の黒い魔法少女に向かって全力疾走をする。
「あたれぇええええええ!!!!」
そして、黒い魔法少女に近付いたところでその全力をぶつけた!
「なっ……!」
突然の突撃に驚いた悪い魔法少女は一瞬戸惑い、防御を忘れる。そして、私の全力全開が魔法の力となって猛スピードでぶつかった。
「きゃあああああああ!!!!」
間違いなく直撃。当たった瞬間、物凄い爆風で回りに白い煙が立つ。私は息を切らしてその場でぜぇぜぇと呼吸を荒くする。
「これで……」
数秒ほどで煙が消えると、そこには衣装がボロボロになった悪い魔法少女がそこにいた。
「ぐっ……やったわね……あなた名前は?」
ボロボロの体を支えながら悪い魔法少女は私に問いかける。
「わ、私の名前はま、魔法少女ユリーナ! あなたのような悪い魔法少女を倒す正義の味方!」
咄嗟に私は自分の魔法少女としての名前を決め、名乗る。
「ふんっ……魔法少女ユリーナ……私の名前は魔法少女レズーナ。この世の全ての男を女にし、全ての人類を百合にする魔法少女よ。覚えておきなさい!」
魔法少女レズーナと名乗る女の子はそう言うとマントを広げ自分を覆った。すると、次の瞬間にはその場から消えていた。
「魔法少女レズーナ……一体何者なんだろう……」
こうして魔法少女ユリーナの誕生と、魔法少女レズーナの長い戦いが始まったのであった。